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ドホーク滞在記その⑤ by 大谷賢治郎(演出家)

更新日:2023年12月3日



17 日と 18 日はドホーク大学人権学科の学生達と 2 日間の連続ワークショップを行う。学科がそうさせているのかとても個性的な学生たちで、みんなの新しいことを学びたいという姿勢が眩しかった。


ディバイジング(戯曲のない作劇メソッド)を行い、最後は「識字」「家族」「経済」そして「女性」をテーマに4つのグループに分かれ作品を作る。どの作品もレベルが高く、また社会への関心の高さ、意識の高さが窺えた。演劇の力は万国共通だなと思える最後のワークショップであった。


また 1 日目の帰りには PCP が図書室を新設した小学校にも訪問し、絵本や読み聞かせの文化がないクルド自治区(俯瞰的に捉えるとおそらくイスラム文化全体かもしれない)に新 たな文化を根づかせようとしている PCP の活動を体感することが出来た。そして出会 った子どもたちみんながホントかわいかった。

蛇足ではあるが、この 2 日間の夕飯は市場の路上の屋台で買える、ご飯にスープをか けるというもの。一杯100 円。チキンや豆が入ったスープで、一晩目はトマトベースの もの、二晩目は白湯に近い少しグリーンがかったもの。この屋台飯が最高に美味い。

最終日である 19 日はドホーク大学の教授たちを相手に講義を行う。人権学科のある 人文学部の教授だけでなく、ワークショップを受けた学生たちや演劇学科の教授たち も参加。僕は「現在を見つめること、それは未来を構築すること」をテーマに演劇 の可能性について語った:

演劇とは

人々をつなげるものであり

コミュニケーションであり

協調性を育み

自主性を尊重し

創造する力を育み

想像力そのものであり

当事者性を学び

教育のためのツールであり

感性と知性を同時に育むのものであり

過去を振り返り、現在と向き合い、未来を構築するものであり

そして共感そのものである


と。

ワークショップ期間中、僕らの活動を監視する役割の人がいてワークの写真を撮ったり、様子を窺いに来ていたのだが(僕らは彼のことを秘密警察、略して「ひみけー」 と呼んでいた)、「あなたのワークショップに感銘を受けた」と彼もなぜか傍聴者一員として参加、最後には二人で記念撮影もした。これには PCP スタッフも驚いたようであった。

こうして10日の日程を無事終え、帰りは飛行機の遅れなどはあったものの驚くほどスムーズに帰国。

これはあまりの体験の濃さゆえに、誰かに経験を伝えたく、また備忘録として書き留めたドホーク滞在記である。(了)

2023 年 10 月 10 日 大谷賢治郎



▶️大谷賢治郎プロフィール 演出家。1972年東京生まれ。サンフランシスコ州立大学演劇学科卒業。青少年向け演劇から人形劇、古典劇から現代劇、地域演劇から国際共同制作まで、様々な演劇の演出を手がける。2017年から2021年までASSITEJ Internationalの執行委員を務め、若い観客のための演劇の発展に尽力した。また、東京国立博物館でのミュージアムシアターをはじめ、世界中の子ども、若者、様々な能力を持つ大人、専門家を対象とした様々なワークショップのファシリテーターを務める。現在、桐朋学園大学准教授、東京藝術大学非常勤講師、東京都立総合芸術高等学校特別講師。 X https://twitter.com/otanikenjiro instagram https://www.instagram.com/otanikenjiro/ facebook https://www.facebook.com/kenjiro.otani


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